『Le message』から学ぶ性数一致

文法
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今回はプレヴェールという詩人の「Le message」という詩を読みながら、フランス語のややこしルールTOP3に入るあの性数一致に関するルールを見て行きます。まずは詩から読んでみましょう。比較的読みやすいです。


Le message
Jacques Prévert

La porte que quelqu’un a ouverte
誰かが開いた扉
La porte que quelqu’un a refermée
誰かが閉めた扉
La chaise où quelqu’un s’est assis
誰かが座った椅子
Le chat que quelqu’un a caressé
誰かが撫でた猫
Le fruit que quelqu’un a mordu
誰かがかじった果物
La lettre que quelqu’un a lue
誰かが読んだ手紙
La chaise que quelqu’un a renversée
誰かが倒した椅子
La porte que quelqu’un a ouverte
誰かが開いた扉
La route où quelqu’un court encore
誰かが走っている道
Le bois que quelqu’un traverse
誰かが通っていく森
La rivière où quelqu’un se jette
誰かが身を投げる川
L’hôpital où quelqu’un est mort
誰かが死んだ病院


めちゃめちゃ暗い詩ですが、フランス語的にもとってもとっても分かりやすく、そして文法的にもとってもとっても勉強になるので取り上げてみました。

性数一致のルール

まずこの詩は名詞とその名詞を修飾する関係詞節だけで成り立っています。所謂主語と動詞で成り立つ文章はありません。使われている関係代名詞はqueとoù。頭にきている名詞関係詞節の動詞の目的語となるならque、場所を説明する名詞ならoùという感じです。

La chaise où quelqu’un s’est assis
La chaise que quelqu’un a renversée

2文とも名詞は同じですが、上の文は「quelqu’un s’est assis sur la chaise」になるのでoùを、下の文は「quelqu’un a renversé la chaise」とchaiseがrenverserの目的語となっているのでqueを使います。詳しくは関係代名詞の記事にて。

そしてこの詩の文法的ポイントは「La lettre que quelqu’un a lue」の「lue」にあります。lireの過去分詞なら「lu」でしょう、と思った方は大正解、その通りなのですが、フランス語には「avoirを使う複合過去で、直接目的語が動詞よりも前に来た時に、過去分詞がその名詞に性数一致する」という複雑怪奇なルールがあります。まず日本語で意味がわかりません。わたしも大学生の時にこれを習って日本語の文だったのに何一つ意味が分からなかったことをよーく覚えています。が、こんな意味不明ルールもこの「La lettre que quelqu’un a lue」という一文が解決してくれます。

要するに、「lire」という動詞の目的語は「la lettre」であり、そしてこの目的語は直接目的語です。なぜなら動詞と名詞の間にàが入ってないから。そしてその直接目的語は、関係代名詞を使っているため、先行詞となり動詞よりも前に来ています。「la lettre」は見て分かるように女性名詞なので本来「lu」であるはずの過去分詞に「e」がつくと、そういうことです。

注意する点

注意するところは、この性数一致は過去分詞に対して起こるので、例えば現在形では起こりません。「la lettre que je lis」が「*la lettre que je lise」になるなんてことはないです。

それから、今回のルールは直接目的語が対象となるので「La chaise où quelqu’un s’est assis」という文では性数一致が起こりません。

もう一つ、この性数一致は関係代名詞なしでもあり得ます。「Tu as lu cette lettre ?」という質問に対する「Oui, je l’ai lue.」という文章がその例となります。この「l’」は「la lettre」のことを指す「la」ですね、そしてこれは読むという動詞の直接目的語であるということには変わりありません。そんな直接目的語が動詞の前に来ている!ルールに完全一致する!ということで、こういう場合にも性数一致は起こりますので注意です。

何が何でも覚えておいてほしいほど大事なルールではない

このルールに関しては知らなくても全然フランスでは生きていけると思います。というのも、音に反映されることがとても少ない上に、この性数一致をしなくてもコミュニケーションを取る上で全く影響がないからです。そんなこと言ったら「Je suis allée」もそうやん…となりますが、この性数一致はêtreを使った複合過去の度にしなければいけないのでよく使われるのに対し、今回の性数一致はそこまで頻繁に現れないので、この性数一致をしてなくても「んん?」となるネイティブは前者に比べて少ないと思います。今回の詩の中にも性数一致によって発音が変わる過去分詞はありませんね。変わってしまう過去分詞はかなり少ないですが、一つ言うなら「pris」はその影響を受けるので、覚えておくといいかもしれません。フランスに住んでいた時、家を出る時に一緒に住んでいた友達に「Tu les as prises ?」と言われた時に、「オー!音が変わってるやつ!」と思ったのを覚えています。ちなみにこの「les」は「les clefs」(鍵)を表していました。女性名詞ですね。

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