フランス語の参考書などを買うと割と最初の方に出てきがちなこの3つのカタカナたち。フランス語を始めたばかりの人には「何やねん」というカタカナの羅列と「知らんがな」という3つの区別。その通り、別に知らなくても基本的に問題ないのですが、今日はこの3つの違いを明確にしていきましょう。ホント、知らなくても実際はそんなに問題ないです。今回は便宜上カタカナの読みを多用しています。
リエゾン(liaison)
リエゾン(liaison)は本来発音されない語末の子音が次の語頭の母音とくっついて発音されるようになることです。
かの有名な「コマンタレブ?」というセリフですが、この3つの単語を独立させて読むと「コマン」と「アレ」と「ブ」です。フランス語は語末の子音を読まないことの方が多いので「comment」も例に漏れず最後のtは発音されないのですが、次にくる「allez」のaとくっつくことで「ta」ができて「タ」の音が発音されるようになります。これがリエゾン。
- Vous êtes américain ? (アメリカ人ですか?)
- Nous avons un chat. (私たちは猫を飼っています)
この2文の主語と動詞はくっつけて発音されますね、これもリエゾン。
アンシェヌマン(enchaînement)
アンシェヌマン(enchaînement)はリエゾンとは違って発音される語末の子音が語頭の母音とくっついて発音されることです。
この3つの単語も独立させて読むと「イル」と「エ」と「フランセ」ですね。「Il」のlは発音される子音で、次の「est」のeとくっつくので「イル+エ=イレ」となります。これがアンシェヌマン。
- J’ai une amie française. (フランス人の友達がいます)
「une」の最後のeは読まれないので、語末の子音はn。そのnが次の「amie」のaとくっついて「ナ」となりますね。「ユヌ+アミ=ユナミ」です。
エリズィオン(élision)
エリズィオン(élision)はシンプル、「l’amour」「j’aime」「c’est」などもう見た目からくっついてるやつですね。語末に発音されないeを持つ特定の単語(leとかceとかjeとか)が母音から始まる単語とアポストロフでくっつくことです。
これもエリズィオンをなくすと「Je ne ai pas de argent」ですが、文法的にチョー間違いです。こんな書き方をすることも言い方をすることもあり得ないのですが、学習者的にはしやすい間違いですね。エリズィオンすることは知ってるけどうっかりくっつけるのを忘れてしまいがちです。ま、おいおい慣れると思うのでそんなに気にしなくてもいいとは思います。慣れたら忘れるなんてことなくなるので、大丈夫。
少し深堀してみましょう。
「私たちは」を意味する「on est」ですが、これは「オンエ」と読まずに「オンネ」と読みますね。さて、これはリエゾンとアンシェヌマンどちらでしょう?
「on」は単独でも「オン」と読むので発音される子音が次の母音とくっつくからアンシェヌマンだな!と思いたいところですが、これは残念ながらリエゾンです。一体なぜ?
「on」の発音は所謂鼻母音というやつですね。日本語では「オン」と表記されがちです。確かに「オン」としか表記できないのですが、これのせいで上の間違いが発生します。というのも、「on」は「ɔ̃」という発音記号で表します。鼻母音の発音記号にはこの上のにょろにょろがついてるんですが、「ɔ」という音を鼻から発音しましょうということを表しています。なのでこの発音記号からも分かる通り、「on」は一音なのです。oとnが読まれているというよりもonという一音が読まれているので、nの音が読まれている、とみなすことができません。onは発音されているけど、oとかnが単独で発音されているわけではないので、発音されない語末の子音nと次の語の母音eがくっついて「オンネ」になると言え、これはリエゾンであると言えるわけです。
ここで抑えておいてほしいポイントは、こんなことは知っていても特にどうにもならないので知らなくて全然OKということです。
最後にもうひとつ。
これは「Paul」のlと「est」がくっついて「ポーレ」のような音になります。では次の文は?
「Jean」のnと「est」がくっついて「ジャンネ」かな。ちなみにJeanは鼻母音で終わってるからリエゾンだな!となってくれたら嬉しいです。その通り、ここはリエゾンなわけですが、「ジャンネ」には絶対になりません。なぜ?なぜならリエゾンだからです。もっと言うと、リエゾンには「しなければいけないリエゾン」「してもしなくてもいいリエゾン」「してはいけないリエゾン」が存在し、ここは「してはいけないリエゾン」だからです。
奥深い!ということでリエゾンの3種類についてはまた別の記事で。ちなみにアンシェヌマンは逆にどんな場合でも必ずするというのが基本ルールです。
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